本日、千葉クラブハウスにてオシム監督(千葉)へのW杯開幕にあたっての共同インタビューが行われました。席上のコメントは以下のとおりです。
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Q:4年前の大会は波乱の大会だったと思うのですが、今回はどういう大会になるとお考えでしょうか?
「いま『波乱の大会だった』とおっしゃいましたが、何をもって波乱と言ったのでしょうか。そこを言っていただかないと比べようがありません」
Q:アルゼンチンが敗れたり、フランスが敗れたりしたことです。
「そういうことは今回も起こるかもしれません。でも、それが波乱だとは言えないのではないでしょうか。実際に、前回の大会ではアルゼンチンやフランスが早々と負けました。今回のグループを見たときに、そういうことはないだろうと思うかもしれませんが実際にはブラジルが勝てない可能性もあります。
昨夜オランダとオーストラリアの試合を見ましたけれども、何の差もありませんでした。ひとりひとりの選手を見ましたけれども、差はありません。2つのチームで全員がユニホームを総取り替えしたら、どっちがオランダでどっちがオーストラリアかわからないじゃないですか(笑)
そういう意味で、セルビア・モンテネグロがアルゼンチンと試合をしたときに、昨日見た試合のようになにが起きるかはわかりません。もちろん自分たちが勝ち進むためにやっているわけですから。
例えば順当に強いチームが勝ったら『あ、勝った』と思うかもしれません。でも、弱いチームが勝ってもその先は続くわけですから、『弱いチーム』とは言えないと思います。グループCでいうとオランダ、アルゼンチンの2つが有利だと言われていますけど、実際はどうなんでしょうか。その先はもう言うつもりはありません。
昨日の日本代表戦を皆さん見たと思いますが、マルタと試合をして1-0ですよね。でも、練習試合と公式戦は違うものです。公式戦はプレッシャーがかかりますし、責任感を伴うものです。そういう中で実力を発揮するというのは誰にとっても難しいことです。例えばブラジルは日本より強いとしましょう。10回試合をすれば9回勝つかもしれません。ただ、その1回は日本が勝つ可能性があるんです。その1回が、今回の大会で起こったらどうなりますか? そういうことが1試合起こるだけで、結果というのは変わってくるんです。すごく危険なことです。
今のは例えで言っただけで、10回試合をして9回ブラジルが勝つとは思いません。引き分けも何度か起こるでしょうし。それくらいに思ってください。ただ例えて言えばそういうことです」
「初戦(オーストラリア戦)は、向こうの時間で何時にキックオフですか?」
記者:6月12日15時です。
「ここで、試合の前に何でも言うことはできますし、試合が終わった後に何を言うこともできます。ただ実際に6月12日のドイツ時間の3時、その時間からその試合の終わる瞬間まで、その時間がすごく大事で、その時間に選手たちというのはいちばんのパフォーマンスを発揮しなくてならないのです。本当に簡単なことではないんです。私たちはその前後でどんなことでも言うことは簡単です。
ブラジル、スペイン、オランダなど7つか8つの決勝トーナメントに出場するべきチーム、そう思われているチームがあることは私もわかっています。ただ、その次のグループ、日本もそこに入ると思いますが、そういうサプライズを起こせる国というのがあるというのも事実です。そこでなにか起これば面白いものになるでしょう」
Q:セルビア・モンテネグロという国がモンテネグロの独立という状況にあると思います。こういう中で戦うチームというのはどんな気持ちなのでしょうか。普通の力を発揮できるのか、それとも気持ち的に国のことを考えて心配になってしまうのか?
「セルビア・モンテネグロという国には実際にいくつかの国が分かれていった過去がありますし、いろんなことがあるわけですけれど、それは問題にならないはずです。なぜなら選手たちは政治家たちより賢いからです(笑)
モンテネグロの選手というのは、ほとんどいないはずです。キーパー(ドラゴスラフ・イェヴリッチ)と、あとは若い小さい選手、イタリアのレッチェでプレーしていた…(ミルコ・ヴチニッチ)。彼はイタリアでずっとプレーしていたんですけど、完全なモンテネグロ人です。キーパーはセルビア人なんですけど、モンテネグロで生まれ育ったという経緯があります。もう一度言いますけど、選手たちは政治家より賢いので問題はないでしょう。
そういう意味ではコートジボワールのほうが内戦という意味で大きな問題を抱えているのではないですか。ただ、サッカーはそのままサッカーなだけですから。でも、サッカーというのはすごく大切な存在で、サッカーというもので何かをひとつに出来るという力があるのではないでしょうか。今回は1ヶ月ちょっとの話ですけど」
Q:ワールドカップでクロアチアが日本と同じグループになりましたが、クロアチアというチームに対してどういう印象をお持ちですか?
「私はオーストラリアに良い印象を持っているんです。オーストラリアを忘れないでほしいという意味で、敢えてこの答えを言いました。なぜなら初戦がオーストラリアですから。ひとつ飛ばして聞かないでください(笑)
オーストラリアを飛ばすのはそんなに簡単じゃないです。あんなに良いチームですから。その後がクロアチアです。オーストラリア戦の後になったらクロアチアについて話しましょう。
私は今回の国際親善試合をたくさん見ました。日本はドイツに引き分けましたよね。それと同時に、昨日の試合でオランダとオーストラリアも引き分けました。クロアチアの試合も全部見ました。イランやポーランド、いろんなチームとやりました。ですが、国際親善試合は練習試合です。練習試合は練習試合ということです。そして、公式戦は公式戦ということです。なぜこういうことを言うかというと、第1戦がその後を決めるからです。実際に、過去の試合を見ても第1戦目を落としてその後の2戦を勝って予選を通過するというチームはほとんどないはずです」
Q:いま初戦の話をされていますけど、90年W杯のオシム監督は西ドイツを相手にサビチェビッチとかストイコビッチ、スシッチ、攻撃的な選手を入れて1-4で負けていますよね。このときの初戦とはどう位置づけたんですか?
「まず3試合あるうちの第1戦がいちばん良い国とやる試合だったということです。
あの試合に関しては、全力を尽くして負けたんですよ。ただ、全力の尽くし方として、国のいろんなメディアの皆さんを納得させるために、いちばん良い選手たちを西ドイツ戦に起用したんです。ただ、いちばん良い選手・名前的に良い選手を集めたチームと、いちばん良いチームとはまた別だということなんです。それを国の人にわかってもらうために、敢えてそのメンバーを組んで戦いました。実際にそのメンバーを組んで負けたわけですから、あとは周りの人たちに納得してもらえたわけです。そこで私は新たにチームを組んで次の試合に臨んだのです」
Q:いちばん良い相手という難しい試合だから、それが出来たということですか?
「実際そうで、他のチームだったら多分そのメンバーでも勝ってしまっていたでしょう。西ドイツだからこそ、そういうメンバーを組んで戦わせたのです。いま言ってる話でいけば、どの国も同じような問題を抱えているわけです。
日本で言えば、例えば中盤に小野がいますよね、小笠原、中村、中田英寿、それだけいてアレックス(三都主)もいます。さらに前線に玉田や柳沢といっぱいいるわけです。誰が見てもこの選手は試合に出るべきだという選手が6人はいます。ただ、そういう選手のうち、ディフェンシブな選手はいるのですか。全員攻撃的な選手です。では、一体誰がディフェンスをやるのですか。サッカーは4人で守ることはできないのです。サッカーというのは、バランスを保つために水を運ぶ役割をする選手が必要になってくるわけです。そういう意味ではジーコのチームでも同じことが起こっているわけで、その話をさっきしていたわけです。福西ひとりで水が運べるでしょうか。福西がトラックを運転して運ぶことはできますけど(笑)、チームのバランスというのはそういうことを言うのだと思います。
誰でも攻撃的な選手というのは好きなものです。たぶん、ここにいるほとんどというか全員の人が忘れていると思いますけど、忘れないでほしいのは、いま代表に集まっている選手というのは実際に各々に所属クラブがあって、中村がセルティック、中田英寿がボルトン、小野が浦和…。彼らはクラブの中で『ひとり』の存在であって、残りの10人でディフェンスを補っているという部分があるわけです。そういうメンバーがひとつのチームに6人も集まってしまって、それでチームが成り立つのでしょうか。簡単な数学ですよね。
ただ、そういう技術的に高い選手を出さないと、みなさんは文句を言いますよね。1-0で勝っていて守りに入る時には、そういう選手を全員下げてディフェンシブな選手を入れても『よかった、よかった』と言うかもしれませんけど。ただその逆に、失うものがなくなったとか、絶対に勝たなくてはならないという場面では攻撃的な選手を3人、4人入れることは必要になってくるでしょう。しかし、それは特別なシチュエーションです。それはどこでも起こることですし、ブラジルも同じ問題があります。フランスもそうです。イングランドもそうです。すごく良い中盤がいっぱいいますけど、ディフェンシブな選手はいません。そういう(テーマという)のはメディアの皆さんにとって書くと面白いんじゃないですか。皆さんも各新聞社やいろいろな会社から来ているわけで、会社に戻ればひとりの存在ですよね。でも、あなた達が全員集まってひとつの新聞に書いてみてください。果たして良い記事ですかね(笑)
今日は練習と言ってもジョグだけなんで、私はそんなに重要じゃないと思います。まだあと10分くらいは質問を受けていても大丈夫です」
Q:オーストラリアのどういう部分が好印象なのでしょうか?
「具体的にどういう部分が…と言いますけど、『どういう部分』というのはどういう意味ですか? はっきり言ってください。そうしたら答えますから(笑)。
どのように、具体的に聞かれれば、例えばしっかり走れる選手がいるということは走力的に準備が出来ているということです。そして、しっかりした戦術ができる、ひとりひとりの技術が高い、そして背が高い、それが具体的なすべてじゃないですか。ほかに言うことはありますか。そしてさらに素晴らしい代表監督もいますよね。その監督によって指揮されているチームなんですよね。
代表監督がパッと来たからといって、チームの選手の技術が上がるということはないんです。ということは、その代表監督がパッと来てまとまるというのは選手の能力が高いということじゃないですか。その時点ですべてが具体的じゃないですか? わたしはいま日本にいるわけで、そういう意味で日本に気持ちがいっているのは確かなんです。そこで日本がオーストラリアに勝ったとき、私に『あなたが言ったことは間違ってたじゃないか』と言ってくれたほうが望ましい結果だと思っているんです(笑)。ただ、私はオーストラリア戦を注意深くやってほしいと思って言っているわけです。あなたは注意しなくていいですよ、あなたが試合に出る訳じゃないので(笑)」
Q:いまワールドカップという大会がどんどん大きくなっている現状があって、選手は試合数が増えて疲労がたまっている中で大会を迎えるという現実もあります。それでも、いまワールドカップというのは世界最高峰のサッカーが見られる大会になっているとお考えでしょうか?
「まず、ワールドカップに出るチームが世界でいちばん良いチームではありません。今回ワールドカップに出場する半分くらいのチームは世界で最高峰のチームだとは思います。地理上でのワールドカップがいまのワールドカップです。全世界の国が参加できるように。まあ、オリンピックも参加することが大事だと言うでしょう? そういう意味で、参加すれば、そこがいちばん良いチームだとは限りません。
例えばワールドカップが16のチームしか参加できない大会で、それが本当に最高峰の16チームだとしたら日本や韓国はおそらく参加できないでしょう。難しいと思いますよ。もっと参加できるチームを増やして、各地で予選をすることで日本や韓国がベスト16に入っていく可能性ができたわけです。
例えば2002年のワールドカップのときにオランダは出場できませんでした。オランダというのは常に世界の5本の指に入ってくる国です。でも、来ませんでしたよね。じゃあ、そこに何かの問題があると思いますか。ウルグアイやデンマーク、ロシアやトルコがいないときもあります。ということは、いつも必ず世界最高峰の大会ではないということです。だからこそ、ワールドカップがいちばん強いチームを決める大会とは言えないかもしれません。そういう質問でしたよね?(笑)」
Q:そういう現状に対してオシム監督は納得されているんですか?
「本当にプロフェッショナルとして世界最高峰の強いチームを決める大会をつくるべきなのか、それとも世界のいろんな国が参加できてその中で優勝者を決める大会が良いのか、それは難しい話です。実際、FIFAというのもいろんな国の人間で構成されているし、FIFAや選手だけじゃなくて審判もそうですよね。いろんな国から呼ばれていて、例えばバングラディシュとかニュージーランドからも呼んでいます。そしてこの大会は非常にお金がかかっている。強いチームを決めようという大会で、そのような審判が笛を吹いてミスを犯すことがあるわけです。そういうことが絡んでいるので、そしてそれには政治も絡んでいるので、なかなか難しい問題だと思います。
ただ、世界最高峰のチームを何チームか集めて大会をすると、例えですけどオランダとドイツが直接対決をして、どちらかがどちらかを落として上に進むということが全ての試合で起こるでしょう。それよりはカメルーンとかナイジェリアとかメキシコ、ウクライナという次に控えているチームがドイツやオランダを落とすことが起きるほうが興味深くて面白いという事実もあるわけです。どちらが良いかというのは難しい問題だと思います」
Q:オーストラリア戦で日本が戦術的に気をつけなければいけないというのはどういう点でしょうか?
「電話を持ってますか? ジーコに電話しましょう(笑)戦術的なことを私が言うのは間違っています。残念ですが、それは答えられません」
Q:例えば付け入るスキがあるとしたら、それはどこなんでしょうか?
「そのチャンスがあったとしても、それも私が答えることではありません。記者の皆さんが帰られて、あなたが個人的に聞いてくるんでしたら後から話します。でも記者の皆さんというのは、そうやって個人的に話したことも最後は書きますから。結局言えません(笑)」
Q:セルビア・モンテネグロのチームは堅守速攻というイメージがあると思います。いまのセルビア・モンテネグロ代表をオシム監督はどう思っていらっしゃいますか?
「あなたはいま、いいことを言いました。堅守で速攻ということがわかっているのなら、私に聞かないでください(笑)」
以上
J’s GOALより
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